HMGB1は敗血症性ショックに重要

細菌の毒素の一種リポポリサッカライド(LPS)は敗血症性ショックを起こす。LPSと細胞外のATPはインフラマゾーム(インフラマソーム)を活性化してcaspase-1のを活性化する。細胞内で不活性の前駆体として存在するIL-1βとIL-18はcaspase-1の作用で切断され細胞外へ放出される。IL-1βとIL-18は分泌されるタンパク質が持つシグナルペプチドを持たないのでどういう方法で放出されるのか謎である。caspase-1によるタンパク分解を介して発動するような特別な分泌機構があるのかもしれない。敗血症性ショックにはIL-1βとIL-18は必須ではない。IL-1βとIL-18をともに欠損したマウスもLPSにより同じように死亡するからだ。一方HMGB-1に対する抗体はLPSによる死亡を抑制できる。通常核に存在するHMGB-1は代表的な危険シグナルの一つで細胞が危険に直面したことを他の細胞に伝える警戒物質である。HMGB-1にもシグナルペプチドはないのでどうやって細胞外に放出されるのかは謎である。放出のシステムにIL-1βと同様にインフラマゾームが関与しているのではないか?と予想される。インフラマゾームはNLR受容体グループの分子とASC、caspase-1が集合してつくる700kDaほどの巨大複合体だ。NLRの一種であるNalp3(NLRP3)を欠損したマクロファージではLPSとATPによるHMGB-1の放出が起こらない。一方サルモネラ菌の鞭毛タンパク質により誘発されるインフラマゾームはIpafが関係している。Ipafを欠損したマクロファージではやはりサルモネラによるHMGB-1の放出が起こらない。放出されるHMGB-1は分解を受けていないものと同じサイズなのでIL-1βのような切断は放出には必須ではないようだ。ところでHMGB-1の受容体は糖化終末産物(AGE)の受容体RAGEである。培養細胞で発現させたHMGB-1にはRAGEに刺激作用がなく、CpGのような細菌由来のDNA断片と結合したHMGB-1がRAGEのよい相手になるらしい。
Lamkanfi M., Sarkar A. et al. Inflammasome-dependent release of the alarmin HMGB-1 in endotoxemia. J Immunol 2010; 185: 4385-4392