衝撃による脳障害

戦場で爆弾にやられても防御が十分ならとりあえず目立った外傷からはまぬかれる。しかし衝撃波は血液のなかの波となって脳に至る。それがまったく無害だとは言えない。イラクやアフガンに派遣された兵士のなかで爆発の衝撃波を繰り返し受けたものに脳障害が頻発している。その数は20万人とも32万人とも言われている。睡眠障害や耳鳴り、頭痛、記憶障害を伴い日常のふつうの行動を組み立てるのに困難を生じるようになる。これはPTSDとは異なり脳に病理学的な変化を伴う。外傷性脳障害(TBI)で亡くなる人が少ないので剖検例が乏しいが自殺したTBI患者のもと兵士の脳にはアルツハイマー病に特有の変化が表れていた。27歳で。TBIを見分けるのは外傷直後では容易でないかもしれない。しかし脳の障害に伴って血中に現れるマーカーが研究されている。フェイズ2の治験をしているのはUCH-L1とGFAPだ(ubiquitin C-terminal hydrolase (UCH-L1) and glial fibrillary acidic protein (GFAP))。これは交通外傷後の脳障害の早期発見にも使えるかもしれない。
http://www.nature.com/news/2011/110921/full/477390a.html