ケ・アプロベッチェ

「スペインではレストランで知り合いが食べているところに出くわすと『ケ・アプロベッチェ』というんだ。」
「なんなのそれ?」
「おいしく召し上がれっていう意味だよ。」
「なんかわかるようなわからないような意味不明な言葉だね。」
「でもさ、顔を知っているのに挨拶しないのは何か変だろ?『それおいしいの?』って聞くのもなんか間が抜けているし。決まった形の文句があるってことはなんとなく気まずいのを避けるのに重要なんだと思うよ。」
「そういえば先日電車のなかでこんなことがあったよ。7人掛けのいすに6人座っていたんだ。それをおじさんがゆずってほしかったみたいで、持っていたカバンでちょっと横にずれてくださいっていう動作をしたんだよ。そしたらそこにいた女の人がすごく嫌な顔をして立ってよそにいっちゃったっていうことがあったね。」
「なんかカバンでどけられるモノみたいな扱いをされたのが嫌だったんじゃないかな。『おじょうさんすみませんが少し御詰め合わせいただけませんか?』って言えばいいのにね。」