うつの科学

NHKスペシャルによるとうつについて従来の精神科的な診断だけでなく光トポグラフィーを用いた客観的な診断法が開発されつつあるという。光トポグラフィーは赤外線によって脳内の血流をリアルタイムで測定するもの。言葉を思い浮かべてもらうと通常ある部分の血流量が増えてくるがうつでは平坦なままだという。似た病気の双極性障害ではあとになって血流の増加が増幅するという。なんとなく「銀河帝国の興亡」で出てきた「干渉高平部」を連想するが。光トポグラフィーを用いて診断するとうつの40%程度が双極性障害の誤診だという。治療についてもネガティブな感情をつかさどる扁桃体の暴走がうつの本体だとして、これを抑える方法が開発されている。TMSは強力な磁気パルスを与えて脳内の特定の部分を活性化する方法でこれでDLPFC(背外側前頭野)を刺激すると扁桃体に抑制が効いてうつが改善してくるという。もっとドラスティックな方法としては脳の深部にカテーテルを入れて胸までリードを通し胸に埋め込んだジェネレータから脳の25野を電気刺激するという。25野はDLPFCと扁桃体の両方に影響をしているのでTMSより効果的らしい。残念ながら日本ではTMSが治験として一部の病院で行われているのみである。これらは薬が効かない重症のうつの治療だがより軽度のうつではカウンセリングによる思考の方向付けが脳の活動を変えるのに役立つという。実際にカウンセラーにより3週間の治療で扁桃体の血流量が減少して暴走が止まった例があるという。そのカウンセリングとは?よくある方法だが「もう半分しかない」というのを「まだ半分もある」という思考法に切り替えるものだという。まじめできっちりした性格の人が仕事の1%がうまくいかなくて落ち込んでいるのを「99%はうまくできているじゃないですか」と方向付けしてあげるものだ。こうした方法は食事や運動などの生活習慣の面をよい方向へ向けていくきっかけになり、いいサイクルを形成するらしい。