腸管からのリポタンパク質の放出を抑えると肥満しにくい?

ミクロソームトリグリセライド転移タンパク(MTP)はトリグリセライドに富むリポタンパク質を腸管または肝臓から放出する際に働く。腸管特異的なMTPを抑制する薬は肥満を改善するか?を調べた。JTT-130は腸管のMTPを阻害する経口の薬物だ。ラットのエサにJTT-130を0.029%混ぜて食べさせ、脂肪分が3.1%の食餌と35%の食餌を食べさせた。JTT-130と35%の高脂肪食を食べさせたラットでは偽薬を飲ませたラットに比べてGLP-1(食後のインスリン分泌を増やすホルモン)とPYY(食欲を落とす腸管のホルモンで、小腸末端に到達する脂肪が増えると分泌が増える)の分泌が増加した。食事量が減って体重増加と腹部の脂肪および肝臓のトリグリセライドが偽薬を飲んだラットに比べて低下した。腸管の脂肪の吸収が低下するようで、便中の遊離脂肪酸は増加した。35%の脂肪食を食べさせたラットにグルコース負荷試験を行うとJTT-130を飲ませていたほうが血糖とインスリン値が低下した。3.1%の脂肪食を食べさせたラットでは便中の脂肪が多くなる以外は目立った変化がなかった。JTT-130を飲んで35%の脂肪を食べたラットでは酸素消費と二酸化炭素放出が増加した。
Hata T. Mera H. et al. JTT-130, a novel intestine-specific inhibitor of microsomal triglyceride transfer protein, suppresses high fat diet-induced obesity and glucose intolerance in Sprague-dawley rats. Diabetes, Obesity and Metabolism doi: 10.1111/j.1463-1326.2011.01368.x
消化されないトリグリセライド類似物質のオルリステットでは便が脂肪っぽくなる他は食欲が落ちるという話は聞かないが、消化された遊離脂肪酸が末端まで届くとPYYの分泌が増える、というところが違うのかな?消化されていないトリグリセライドはPYYの分泌促進作用がないのかも。