TTPノックアウトマウスの顆粒球増加

Kaplan IM. Morisot S. et al. Spontaneous reactive granulopoiesis by a non-cell-autonomous mechanism without disturbing long-term hematopoietic setem cell quiescence. J Immunol 2011; 186:2826-2834
Tristetraprolin(TTP, ZFP36,Nup475,Tis11)はアミノ酸プロリンが4個並んだ配列が3回現れるという独特な構造から命名されたタンパク質だ。最初インスリンの刺激で増えるタンパク質として発見されたのだが、しばらくその機能は不明だった。今では寿命の短いmRNAの3'非翻訳領域について分解を早める機能を持つことが明らかになっている。寿命の短いmRNAとは何か?必要なとき短時間だけ作用してほしいものを意味する。代表例は炎症性のサイトカインのmRNAだ。TNF-αのmRNAはTTPの作用で早く壊れる。TTPをノックアウトするとTNF-αが長く効いて自己免疫性疾患のようになるだろうか?実際につくると肝臓での炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α、IL-6)の発現が増え、血清中の濃度も高くなっていた。その結果として白血球の顆粒球が増加した。放射線照射で骨髄を破壊したTTPノックアウトマウスに正常マウスの骨髄を移植してもやはり顆粒球は増加した。つまり顆粒球は外からくるシグナルに反応して増えており、それ自体の異常で勝手に増殖しているのではない。まさにTTPが火種を消さないので炎症シグナルがくすぶり続ける状態になっているのだ。重症の疾患の治療の際にインスリングルコースカリウムを点滴するGIK療法というのをやることが(昔)あった。今考えるとこの意味はインスリンによる低血糖や低カリウム血症を起こさずにTTPを増やして炎症性サイトカインを抑えるのが効果のもとだったのかも。