コレステロールレベルとINSIG2

SREBP-1は血中コレステロールレベルに反応して脂質合成遺伝子のスイッチを入れる転写因子だ。SREBP-1は小胞体の膜に固定されているが、コレステロールのレベルが下がるとゴルジ体に運ばれ膜から切断されて核に移行する。INSIG2はSREBP-1を小胞体の膜にとどめておく作用がある。全ゲノムの一塩基置換多型(SNP)解析によってINSIG2遺伝子上流のrs7566605というSNPが肥満と関係することが報告されていた。そこでINSIG2遺伝子そのものについてさらに詳しい塩基配列解析を行った。ケベック州で645名のゲノムから18434塩基の解読を行い新たに32個のSNPを発見した。このうちrs10490626とrs12464355は血中低比重リポタンパク(LDL=いわゆる悪玉コレステロール)が低いことと関係していた。またLDLのマーカーでもあるアポBタンパク質レベルの低いこととも相関していた。しかし肥満度を表すBMIとの相関は認められなかった。このrs10490626とLDL、アポBの関連は他のケベックの住民、欧州人、南アジア人でも確認された。SORBS1遺伝子はINSIG2遺伝子のmRNAレベルと関係するが、このSORBS1の変異も発見された。この変異はrs10490626とともにLDLおよびアポBと関係した。Do R., Bailey S.D. et al. Fine mapping of the INSIG2 gene identifies a variant associated with low-density lipoprotein cholesterol and total apoB levels. Circulation: Cardiovascular Genetics 2010; doi:10.1161/CIRCGENETICS.109.917039