キチンキトサンはアレルギーに影響するか?

喘息の重要なアレルゲンはゴキブリの糞だ。昆虫の外皮にはキチンが含まれているが、キチンはカビや線虫、甲殻類の外皮にも含まれている。線虫の罹患率低下がアレルギーの増加に関連しているとすると、消化管を通じてキチンと接しているとアレルギーが減るかもしれない。文献を調査してみる。
マウスにアレルゲンをあらかじめ投与して喘息症状を起こしやすくしておき、これにキトサンを飲ませるか、鼻に投与すると喘息症状が軽くなる。免疫反応は細胞免疫を中心としたTh1タイプと抗体産生を中心としたTh2タイプに大まかに分けられる(これは考え方の枠組みで、最近はTh17 タイプとか新たな枠組みが考えられ、Th1、Th2も整然と分類できるものではないという説も有る)。キトサンの効果は免疫反応をTh1タイプにシフトさせるからではないかと考えられる。ダニの抗原のDer-fに対する単球由来マクロファージ(MDM)の反応を調べた。IL6とTNFαの産生が低下、CD44とTLR4の発現が低下、T細胞の分裂が抑制された。キトサンの投与はマウスの喘息モデルではArgI, 炎症性の一酸化窒素合成酵素iNOS、thymic stromal lymohopoietin(TSLP)の発現が低下した。
Chen CL, Wang YM eta l. Biomaterials 2008; 29:2173-82
まだキトサンそのものの作用は十分調べられていない印象。むしろ免疫増強剤としての作用や、遺伝子ベクターを運ぶためのナノマテリアルとしての機能が注目されているようだ。
Saint-Lu N, Tourdot S et al. Targeting the allergen to oral dendritic cells with mucoadhesive chitosan particles enhances tolerance induction.Allergy 2009;64:1003-13
卵白アルブミンOVA)であらかじめ感作して喘息反応を起こすようにしたマウスにキトサンと混ぜたアルブミンを口腔内(舌下)投与して、喘息症状が緩和されるか検討した。骨髄由来の樹状細胞(BMDC)と口腔内の抗原提示細胞(APC)による取り込みは正電荷を多くしたキトサンと微小粒子化したキトサンで増加した。この結果T細胞によるインターフェロンγ、IL-10の産生が増加した。肺の炎症と好酸球の浸入は劇的に減少した。舌下投与のアレルギーワクチンのキャリアーとしてキトサンは有望との結果。