鼻から胃からレプチン:Intravail

注射を嫌う人は多く、インスリン注射が必要でも針が怖いためにためらう人は多い(実際やってみるとたいしたことないので『なんでいままで逃げてたんだろう?』という人が大半)。このため吸入して肺から吸収されるインスリンが研究されていたが、投与量が10倍くらい必要などの問題のために開発が中止された。
レプチンは脂肪細胞から分泌されるペプチドで、その116−140のペプチドにも生物作用がある。[D-Leu-4]OB3(簡単のため以後OB3)はレプチンの一部を使った合成ペプチドで食欲抑制作用がある。ペプチドなので使用には注射が必要だ。人間に使用するにはなるべくなら注射を避けたい。鼻の粘膜からのペプチドの吸収を促進する薬剤が開発されていてIntravailという商品名でAegis Therapeuticsから発売されている。OB3をIntravailと混ぜて鼻から投与すると、鼻の粘膜から吸収される早いフェーズと消化管から吸収される遅いフェーズが認められた。これは予想外だった。そこで胃管を用いて消化管に直接Intravail-OB3を入れたらどうか?を調べた。正常マウスと肥満モデル動物のob/obで食欲を抑制して体重を落とす効果(5%-11%程度)が認められ、血糖もさがった(20-30%)。血糖低下は食事制限による低下と同程度であった。レプチンは骨芽細胞に影響するらしく、骨芽細胞の出すカルシウム結合タンパクosteocalcinを増やす。胃に投与されたIntravail-OB3にもosteocalcinを増やす作用が認められた。
Novakovic ZM, Leinung MC et al. Oral delivery of mouse [D-Leu-4]-OB3, a synthetic peptide amide with leptin-like activity, in male C57BL/6J wild-type and ob/ob mice: effects on energy balance, glycemic control and serum osteocalcin levels. Diabetes, Obesity and Metabolism 2010; 12: 532-539
一般に人の肥満者では血中のレプチンは上昇していることが多く、レプチンの欠損しているob/obとは異なり、レプチンの作用がでにくい(レプチン抵抗性があるという)ので、Intravail-OB3もどこまで有効かまだ未知数。