メタボローム解析の時代

遺伝的な素因が同じでも生活習慣や過去の疾患の既往、合併疾患によって体内環境は異なる。個々の患者のその時点でのリスクを判断するには体内の代謝物の特定のパターンが重要かもしれない。ゲノム全長にわたる遺伝子多型の解析はすでに多数行われているが、代謝物のプロファイルを解析するメタボローム解析はまだそれほど多く見ない。虚血性心疾患のリスク評価として、コレステロールや血糖、血圧といった古典的な因子以外のものがメタボローム解析で見つかる可能性がある。
質量分析により69種の代謝物を測定した。これらの代謝物はCATHGEN biorepositoryの患者で測定された。174名の冠状動脈疾患の患者と174名の年齢、性をマッチさせた対照群でメタボローム解析を行った。別に140名の冠状動脈疾患患者と140名の対照を用意した。さらに第3の冠状動脈疾患63名、対照66名のセットについて検証を行った。その結果分岐鎖アミノ酸代謝物と尿素サイクルの代謝物からなる分子が相関した。ジカルボキシルアシルカルニチンからなる因子は死亡または心筋梗塞を有意に予測した。これは第3の疾患−対照パネルでも再現された。
Shah SH, Bain JR et al. Association of aperipheral blood metabolic profile with coronary artery disease and risk of subsequent cardiovascular events. Circulation: Cardiovascular Genetics 2010, doi:10.1161/CIRCGENETICS.109.852814