心理的ストレスの危険さ

Morimoto K., Morikawa M et al. Mental stress induces sustained elevation of blood pressure and lipid peroxidation in postmenopausal women. Life Sci 2008; 82:99-107 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18061622
7名の閉経後の女性と8名の閉経前の女性に心理的・肉体的ストレスを受けてもらい、血圧と血中のストレス物質の変化を調べた。心理的ストレスはColor Word Test(CWT)、肉体的ストレスはisometric handgripである。CWTは言葉の意味と単語を印刷したインクの色とが食い違うカードを一定の規則に従ってより分けるものだろう。たとえば「赤のカードを抜き出して下さい」との指示で「赤」「黄」「緑」「青」と書かれたカードを山からより分けてもらう。その中に赤で印刷された「緑」とか「青」がいっぱい混じっていてあせると間違うしかけ。慣れてきたらルールを変えていくことにより心理的ストレスは持続させられる。handgripは力いっぱいこぶしを握り締めるというタスクだろう。さて、実験の結果handgripでは影響しなかったがCWTでは閉経後女性で拡張期血圧が上昇し血中のヒドロキシノネナール(HNE:脂質の過酸化物質で加齢臭のもととされる)が増加した。
原発事故のあと心筋梗塞脳卒中が増えているという説があるが、放射能より心理的ストレスの影響が大きいのではないかと思う。というのは冠動脈狭窄の拡張術後の再狭窄を予防するために放射能が利用されているからだ。また冠動脈造影では結構X線を浴びるのでもし照射によって血栓が増えるのなら造影して拡張するより薬物治療のみのほうがいいはずだから。心理的ストレスがどのくらい危険かを実験で示すのはさほど容易でないので文献がすくない(実験をすることが非倫理的とみなされる可能性)。