万年筆

「万年筆に凝るお客っていうのは細かいことにうるさくてね。」
「へえーそうなんだ。」
「どうも書き味が気に入らないって微調整をしてくれっていってくるんだけど、調整してもやっぱり気に入らないでまた直せっていうんだよ。」
「そのひとが使い込むことで独特な味わいがでるんじゃないかなあー。なんか靴が合わないからしばらくはいて慣らしてくれって靴屋に頼むみたいな話だね。」
「納得してもらえるように筆圧に応じたたわみとか摩擦係数を細かく測定した計測データとペン先を電子顕微鏡で撮影した画像を付けて送り返したんですけどね。」
「それもなんか勘違いしている感じがするが…万年筆に凝るようなひとっていうのはお気に入りの作家の何とかさんみたいな筆跡になりたいっていうのが願望なんじゃないの?サイエンス万能みたいなデータを送られてもちんぷんかんぷんだろ?」