アディポネクチン受容体のバリアント

Ashwal R. ,Hemi R et al. Differential expression of novel adiponection receptor-1 transcripts in skeletal muscle of subjects with normal glucose tolerance and type 2 diabetes. Diabetes 2011; 60:936-946
アディポネクチンは小型脂肪細胞から分泌されるサイトカインで”アディポサイトカイン”の一種だ。アディポネクチンはインスリン抵抗性を改善すると考えられている。その受容体はAdipoR1とAdipoR2があり7回膜貫通型だがN末端が細胞質側にあるというGタンパク共役受容体(GPCR)と逆のトポロジーである。エクソン1に複数のものがあり、E1a、E1、E1b、E1cと並んでいる。E1-E2-(-E3-through E8以下略)と読むのがRIT1、E1b-E2-がRIT2、E1-E1c-E2がRIT3、E1a-E1c-E2がRIT4と4種類のスプライスバリアントがある。RIT3は骨格筋と脳で多く、インスリン感受性がいいとRIT3の量が多い。2型糖尿病患者ではRIT3が少ない。E1cの中に翻訳開始点となるATGが3か所あってこれが通常の翻訳開始点からの翻訳を阻害するようである。またAdipoR1のmRNAの3’非翻訳領域は筋肉細胞が筋芽細胞からmyotubeへ分化する際にタンパクへの翻訳を促進するようである。ルシフェラーゼ遺伝子の5’、3’にそれぞれAdipoR1の5'、3'をつないでルシフェラーゼタンパク質の酵素活性を調べると同じmRNAの量でも酵素活性には大きな差が出てくる。mRNAが転写されたあとの翻訳の段階の調節の表れである。ゲノムプロジェクトで遺伝子に書かかれている設計図は読まれてしまったが、意外に少ない遺伝子数の使い回しが重要らしいことがわかり、そちらのメカニズムのほうに興味が移りつつあるようだ。