IDOが癌免疫を阻害する

Soliman H., Mediavilla-Varela M and Antonia S. Indoleamine 2,3-dioxygenase: is it and immune suppressor? Cancer 2010; 16:354-359
インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)は必須アミノ酸トリプトファンを分解する酵素インターフェロンγ(IFNγ)によって誘導される。トリプトファンから補酵素のニコチナマイドアデニンジヌクレオチドNAD)を新規に構成する過程の酵素でもある。癌免疫では抗原提示細胞である樹状細胞の働きが悪くなるために適切な癌の抗原提示がされないことが問題であった。その原因の一つとして癌細胞が分泌するIDOが取り上げられた。癌を取り巻く微小環境にIDOが放出され、癌から流れ込むリンパ節に侵入すると必須アミノ酸であるトリプトファンが少ない事と、毒性のある代謝産物のためにエフェクターT細胞が不活性になり樹状細胞が免疫抑制的になる。d-1メチルトリプトファン(d-1-MT)はIDOを阻害する薬物でもう一つの類似酵素であるIDO2も抑制する。d-1-MTを使用すると樹状細胞ワクチン(不活化した癌細胞に摂食させた樹状細胞をワクチンとして接種する)の効果を高め、免疫的機構を通じて化学療法の効果を増強する。