ABCA1とABCG1がないとマクロファージが移動しにくい

HDLコレステロールは組織から遊離コレステロールを引き出して運び去る。動脈硬化プラークにはコレステロールをため込んだマクロファージが集まっているが、ここから遊離コレステロールをとってやるとマクロファージはプラークから脱出する。この移動には細胞骨格の再編がかかわっていて細胞内のRac1/Rhoの活性バランスが大事である。HDLが遊離コレステロールを吸い出す過程では細胞膜を通してコレステロールを輸送するタンパク質であるABCA1とABCG1が関係している。この両者がないとHDLによる余分のコレステロール除去が進まないので動脈硬化が悪化する。ABCA1とABCG1をともに欠損するマウスのマクロファージでは遊走能が低下していて培養液中で誘導物質による遊走が落ちる。細胞膜の遊離コレステロールは脂質二重膜のうち細胞内の側の膜に多く乗っていて、ABCA1とABCG1の作用で細胞外側の膜に輸送される。細胞外の膜からはHDLによって遊離コレステロールを除去することができる。転写因子のLXRを高発現させるとABCA1とABCG1の発現が増えて細胞膜の外側の遊離コレステロールが増える。細胞膜の内側の遊離コレステロールが多いとRac1が多く細胞膜に局在して細胞骨格が遊走に適さない状態になるらしい。これによりACBA1とABCG1をともに欠損するマウスのマクロファージがプラークから脱出しにくくなる。
PAgler TA., Wang M et al. Deletion of ABCA1 and ABCG1 impairs macrophage migration because of increased Rac1 signaling. Circ Res 2011; 108:194-200