がん免疫を増強するペプチド

CasaresN., Rudilla F. et al. A peptide inhibitor of FOXP3 impairs regulatory T cell activity and improves vaccine efficacy in mice. J Immunol 2010; 185: 5150-5159
がん免疫はがん治療の夢の一つであるがなかなかうまくいかない。がん細胞に対して有効な免疫反応が誘導しにくいのだ。Tregは制御性T細胞でTリンパ球の作用を抑制して過剰な免疫反応を抑える。Tregの分化と維持には転写因子のFOXP3が必要である。FOXP3に結合するペプチドをファージディスプレイライブラリーを用いて探したところ一つの候補を得た。ファージディスプレイは大腸菌に感染するバクテリオファージの表面のタンパク質の一部にランダムな15個のアミノ酸配列を発現させたものだ。得られたペプチドP60(アミノ酸配列:RDFQSFRKMWPFFAM)は細胞内に入ることができ、FOXP3に結合してこの作用を抑制した。結果的にTregの作用が弱まるのでインターフェロンγやIL-2の発現が増加する。マウスの大腸がん細胞のC26の抗原の一つAH1(アミノ酸配列:SPSYVYHQF)をP60とともに投与しておくとマウスはC26がん細胞の移植に対して抵抗性になった。P60のアミノ酸配列をシャッフルしたコントロールのペプチドは効果がなかった。
ほんとかな?というところもあるがC26の移植実験では本当に腫瘍サイズがほとんど大きくなっていない。本当ならすごい結果だ。