運動はマクロファージをM2タイプに変える

Yakeu G., Butcher L. et al. Low-intensity exercise enhances expression of markers of alternative activation in circulating leukocytes: Roles of PPARgamma and Th2 cytokines. Atherosclerosis 2010; Epub ahead of print
抗糖尿病薬のチアゾリジンジオン(アクトスなど)のターゲットである転写因子PPARγは炎症抑制、脂質代謝改善の作用もある。この作用の一部は血中の単球(monocyte)がマクロファージに分化する際に炎症を抑える作用のあるM2タイプのマクロファージに分化誘導する作用があるからと考えられる。適度な運動により白血球のPPARγ発現が増加する。運動習慣のない17名に10000歩の歩行を週3回やってもらい、血中のサイトカインと白血球の遺伝子発現を調べた。M2タイプのマクロファージのマーカーとなる遺伝子としてはAMAC1、CD14、MR、IL-4を使用、M1タイプのマクロファージのマーカー遺伝子としてはMCP-1、TNFα、IL-6を使用した。またPPARγとそのコファクターであるPGC-1α、PGC-1βの発現も調べた。遺伝子発現はリアルタイムPCRによった。血中のTh1タイプサイトカインはIL-6、Th2タイプのサイトカインはIL-4、IL-10 を測定した。運動によりM2のマーカー遺伝子、PGC-1α、PGC-1βが増加しM1のマーカー遺伝子は低下した。運動後Th2サイトカインが増加しTh1サイトカインは低下した。PPARαとPPARδは変化しなかった。適度な運動はPPARγ、PGC-1α、PGC-1βの発現増加を通じて炎症を抑える効果をもつようだ。
Bouhlel MA., Derudas B. et al. PPARgamma activation primes human monocytes into alternative M2 macropahges with anti-inflamamtory properties. Cell Metab 2007; 6: 137-143
Th1サイトカインは単球を動脈硬化促進性のM1タイプに分化させ、Th2サイトカインは抗炎症性のM2タイプに分化させる。ヒトの動脈硬化病変ではM2タイプのマーカーの発現はPPARγの発現と相関している。単球でPPARγを活性化させるとM2タイプに分化する。しかし、活性化していないマクロファージやM1タイプのマクロファージではPPARγの活性化は効果がない。また、PPARγのアゴニスト(活性化薬)は動脈硬化病変でのM2タイプマーカーを増やさない。PPARγによるM2タイプへの誘導は単球の段階でのみ効くようだ。PPARγの活性化は血中の白血球のM2マーカー遺伝子発現を増やす。