鋤鼻器

主要組織適合性抗原複合体(MHC)遺伝子は細胞の表面に表現されている一種のマーカーで自己と非自己の免疫学的な判別に作用する。MHCⅠとMHCⅡがあって、それぞれ先端部分にがまぐちのような口があってここに種々のタンパク質の断片(ぺプチド)を挟み込んでTリンパ球に提示できる。種々の病原体への抵抗性がいいかどうかはMHCが病原体に由来するペプチドをうまく提示てきるかにかかっている。MHC遺伝子群には免疫と関係ない遺伝子も含まれていてHFEはその一つだ。HFEは鉄の吸収をほどほどにとどめる作用があり、HFEが異常になると鉄が無制限に吸収されて病気(ヘモクロマトーシス)になる。鋤鼻器(じょびき)はフェロモンの感知に関係する器官だ。このセンサーにあたるタンパク質はM10といってやはりMHC遺伝子群の中にある。マウスではフェロモンの感知によって同じMHCの相手との交尾を避ける性質がある。MHCの多様性が高いほうが疾患感受性が低くなるからだ。なんとなく関連は見えるのだがM10タンパク質が同じMHCを持つ相手を見分けるメカニズムが不明。