ニッケルのアレルギーにTLR4が関係

Toll like受容体(TLR)は自然免疫にかかわるパターン認識受容体で、一定の繰り返し構造を持つ分子にはそのパターンを認識して反応する。TLR4は細菌の細胞外分子のリポポリサッカライド(LPS)に反応して敗血症性ショックを起こす受容体だが、これがニッケルによる接触皮膚炎に関係するという論文が出た。ニッケルとLPSにはなんら分子構造に似たところがない。なぜニッケルがTLR4を活性化するのかというとLPSに反応するのとは全く別の部分が関係している。マウスではニッケルによる接触皮膚炎が起こらないのでマウスのTLR4とヒトのTLR4を部分に分けてつぎはぎの分子を作り、どこが影響するか調べたところヒトのTLR4の366-616のアミノ酸が関係することがわかった。この範囲内でマウスのTLR4にはなく、ヒトのTLR4にあるヒスチジン(His)456とヒスチジン458がニッケルイオンと相互作用する。ヒスチジンが多数近接してならんだ部位はニッケルと強く結合する性質があり、合成タンパク質をアフィニティー精製するために6個のヒスチジンの連続配列を最後に付加する手法は一般的に用いられている。TLR4のHis456とHis458はこの人工的な付加配列と同様に作用しているようである。ヒトのTLR4をマウスに発現させるとニッケルによる接触皮膚炎をマウスに誘発することができる。
Scmidt M., Raghavan B. et al. Crucial role for human Toll-like receptor 4 in the development of contact allergy to nickel. Nature Immunol 2010; 11:814-819