受容体チロシンキナーゼがサイトカイン受容体と直接結合する

Drube S, Heink S et al. The receptor tyrosine kinase c-Kit controls IL-33 receptor signaling in mast cells. Blood 2010;[Epub ahead of print]
マスト細胞は皮膚などにあって刺激されると蓄えた顆粒の内容物(ヒスタミンなど)を放出してアレルギー反応を起こすほか、皮膚の傷の修復などに関係している。マスト細胞の分化に重要なstem cell factor (SCF)の受容体はc-Kitという受容体チロシンキナーゼである。一般に受容体チロシンキナーゼは増殖因子の受容体が多い。一方サイトカインの受容体はそれ自体はチロシンキナーゼではないのが一般的で、細胞内で別のチロシンキナーゼとつくことはあるが、これまで受容体チロシンキナーゼが直接サイトカイン受容体につくことはないと考えられていた。たとえて言うとメーカーと小売が問屋を介さないで直接取引することはないと考えられていたように。
マスト細胞を刺激するサイトカインのIL-33の受容体がc-Kitに直接つくことが報告された。IL-33の受容体はIL-33R(ST2L)とIL-1R accessary protein (IL-1RAcp)の二つが合わさってできている。IL-1RAcpはc-Kitと結合してあらたな受容体をつくり、これにIL-33がつくという。おわらいコンビの一方が別の芸人と組んで別のユニットをつくる、そんなご法度(?)のような例がここにある。IL-33によるマスト細胞内のSTAT3、Erk1/2、PKBおよびJNKの活性化とIL-33刺激によるマスト細胞からのサイトカイン産生はc-Kitとその刺激因子であるSCFがないとフルに働かないという。