孤束核

「孤束核」と「症例」の検索により病的しゃっくり(吃逆)がヒットする
肺がんの脳転移の既往のある70台男性が2-3時間続くしつこい吃逆を生じた。MRIによる検査で延髄背側に小さな転移がみつかり、がんの髄膜播種が疑われたhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/51/4/51_4_279/_pdf/-char/ja

吃逆の反射弓は、鼻咽頭背側を支配する舌咽神経咽頭枝が求心路で、延髄孤束核に入った刺激が延髄網様体にある中枢でのパターン形成を経て、横隔神経、迷走神経の遠心路へ出力され、横隔膜収縮と声帯閉鎖が同期しておこると考えらえている。この吃逆反射を視床下部などの上位中枢が抑制していると考えられており、誘発された吃逆はGABA作動薬であるバクロフェンで抑制されることが報告されている。

延髄の梗塞が原因で生じた吃逆に伴う失神発作の例も報告されている。こちらは吃逆に対して芍薬甘草湯が有効だったとしているhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/45/SUPPL.3/45_S3_173/_article/-char/ja

症例は79歳, 女性. 主訴は繰り返す失神発作である. 失神時に洞停止が認められ, 恒久的ペースメーカー植え込み目的で当院に紹介入院となった. 心電図, 心エコー, 血液生化学検査に異常所見はなかった. 入院後の観察で, 吃逆時に強い嘔気と咳嗽が出現し, その後に失神をきたすことが判明した. モニター心電図で失神時に洞停止を認めていたが, 血圧をモニタリングしたところ, 洞停止を認めずに急激な血圧低下で失神することも確認された. 頭部MRIの施行では, 延髄腹側部に新規の脳梗塞像とその周囲に虚血性変化が認められた. 吃逆が失神発作に強く関与している可能性が高いと判断し, まず, 薬物治療による加療を選択した. 吃逆抑制として漢方薬である芍薬甘草湯, 迷走神経反射抑制としてムスカリン受容体遮断作用のあるジソピラミドを投与したところ, 吃逆および失神とも完全に消失した. 延髄梗塞に伴う吃逆性失神の治療において興味ある症例と考えられたので報告する.