そんなことはないよアバッキオ

From Lunatic prophet

後期課程は違った。「自ら疑問を持ち〜」というのは言い換えれば何をしてもいいということだが、ぼくは文学部歴史文化学科西洋史学専修課程において、何をしていいのかわからなかった。歴史好きではあったが、西洋史において持つべき疑問、探求すべきテーマが見当たらなかったのだ。当時はほぼすべての興味が絵描きと同人誌づくりに向けられていたというのもあるが、広大な本郷キャンパスにおいて、ぼくはあまりにもお呼びでなかった。なんとか4年には進級したものの、そのあとはメンヘって、ひきこもって、お陀仏である。何かしら探究心のようなものを持つにいたったのは、実に今の仕事を始めてからのことだ。10年を、棒に振った。

なにかばかでかい夢を口に出して語ってみるといいのじゃないか?当然そんなこと実現できないわけだが、よくよく考えるとその目的に近づくための部分的なテーマが見えてくる。小さなテーマであっても全体の大きな目標に向かう一歩だと認識すれば無意味感からは逃れられる。昇天する直前にアバッキオが見る夢(?)に出てくる殉職した警官(の幽霊?)が言っていたけど、一見無駄に見える作業も犯人に近づいていると思えば無駄ではないのだ。そういう大きな夢なしに、いきなり小さなテーマで自分を賭けるに値するものを見つけられる人って…おたく的興味に没入できる人だと思うよ