オウムの名前

ベネズエラの牧場で25年にわたってオウムの集団を観察してきた結果、オウムは家族の間で特有の呼びかけを持っていて、それは遺伝的には決定されず生まれてから覚えることがわかった。オウムの巣作りはかなりの住宅難らしく、牧場の柵につくられたビニールパイプ製の巣箱が大人気。このおかげで多数のつがいを長年にわたって観察することができた。個々の雛が区別され家系図ができあがっているのでどのオウムがどのオウムと遺伝関係があるのかがわかっている。この背景を用いて遺伝的関係のないつがいの巣の間で卵を交換し、生まれた雛が呼びかけの鳴き声(contact call)をどう覚えるかが解析された。これは言うほど簡単ではなく、録音した鳴き声をスペクトル解析してコンピューターで分析するというもの。オウムは時間分解能が高く、言い換えると非常に早口なので人が聞いても区別できない。巣にいるメスはえさを持ち帰ったオスが呼びかけると返事をするのだが、「今帰ったよ」「お帰りなさい」以上のどんな内容を話しているのかはまだ不明だ。雛が個々の名前に値するcontact callを覚える必要性は巣立ちのあとも親が世話をすることによるらしく、親は巣立ちのあと3週間ほどえさをやったりする。この期間に若い鳥たちは群れをつくっているので呼びかけがわからないと親は子供を見分けられない。固有のcontact callを与えられた鳥はアイデンティティーをもつわけだが、ヒトの言語の発達と似たプロセスなのでヒトの言語の研究にも役立ちそうだ。http://www.sciencemag.org/content/333/6041/398.full