北朝鮮が多剤耐性結核の温床になる危険

北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国DPRK)では人口10万人あたり345名の結核の患者がいる。これは韓国および中国の3倍にのぼる。治療が行われないと結核患者の50%は死亡し、さらに10名から20名の新たな患者を作り出す(DPRKの人口は2400万人なので単純に計算すると82800人の患者、治療しないと41400人が死亡し40万人以上の新規患者)。1990年代のDPRKの飢饉依頼国民の栄養状態は劣悪で、結核の広まりやすい状況を作っている。米国の非政府組織と朝鮮系キリスト教団体はDPRK結核の研究所を2年前に設立した。しかし治療の中断率が高く、薬剤耐性菌を作り出す危険が高い。ロシアでは1980年代の混乱の時代に結核罹患率が上昇し、現在でも薬剤耐性菌の率が25%にのぼる。これは東西ヨーロッパやアフリカに薬剤耐性結核が広がるもとの一つだ。DPRKの核開発の野心は問題だが、薬剤耐性結核菌の温床をつくると国際社会はもっと厄介な遺産を残すことになるかもしれない。Perry S., Linton H. and Schoolnik G. Science 2011; 331:263