メトフォルミンと胆汁酸

Carter D., Howlett HC et al. Effects of metformin on bile salt transport by monolayers of human intestinal Caco-2 cells. Diabetes Obes Metab 2002;4:424-427
腸管の上皮由来の細胞としてCaco-2を用いて胆汁酸の輸送に及ぼすメトフォルミンの作用を調べた。メトフォルミン10mmol/l(というかなり高い濃度)を用いると24時間の胆汁酸の輸送が有意に減少した。測定には放射性炭素でラベルしたグリココール酸を用いている。物質の輸送にはナトリウムとの共輸送が関係している場合があるのでNa-K-ATPポンプがメトフォルミンで影響を受けていないか調べた。Na-K-ATPポンプに影響を受けるグルコースプロリンアミノ酸の一種)の輸送はメトフォルミンの影響を受けなかった。
Scarpello JH., Hodgson E and Howlett HC Effect of metformin on bile salt circulation and intestinal motility in type 2 diabetes mellitus Diabet Med 1998; 15:651-656
放射性炭素でラベルしたグリココール酸を用いて胆汁酸の吸収にメトフォルミンが影響するかしらべた。この研究の目的はメトフォルミンでよくみられる腹部の副作用が胆汁酸と関係するかというものだった。腸管内に排出された胆汁酸は一部が小腸末端で再吸収されるが、再吸収されなかったものは便に排出されたり腸内細菌の作用で分解して呼気の二酸化炭素の中に放射性炭素として検出される。呼気は6時間、便は72時間採集した。24名の食事療法またはスルフォニルウレア治療中の糖尿病患者がメトフォルミン1700㎎または偽薬を21日服用した。血糖はメトフォルミン群で47mg/dl低下した。呼気への放射性炭素の排出は有意にメトフォルミン群で増加(9.7%)した(偽薬群は3.1%)。便への放射性炭素の排出はメトフォルミン群17.2%、偽薬群10/1%と有意に増加した。
放射性炭素の放射能は微弱なベータ線(電子線)なので健康には害はないと思うが日本ではできない研究のようだな。放射能と説明するだけで引いてしまうひとが多いからね。夜光塗料の文字盤とかテレビの画面とかからも微弱な放射能は出ていると思うのだけど。