GDF-15 and heart failure

Anand IS., Kempf T. et al. Serial measurement of growth-differentiation factor-15 in heart failure Circulation 2010; 122: 1387-1395
心不全ではアンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)やβブロッカーが予後改善に役立つ。ARBの一種のバルサルタンを用いて心不全の経過を観察した研究(Val-HeFT)で心不全のマーカーとなるような物質の血中濃度を測定した。growth-differentiation factor-15(GDF-15)は冠動脈疾患では予後を示すマーカーであることが示されている。GDF-15が心不全でも予後の良しあしを示すかを検討した。Val-HeFTの参加者1734名で開始時に、1517名で1年後にGDF-15を測定した。開始時のGDF-15の濃度は259〜25637ng/Lであった。1200を超えると異常に高いが、85%の患者で上昇していた。GDF-15の値が100ng/L増えるにつれ、死亡のリスクは1.017倍(95%信頼限界1.014-1.019)、病的なイベント(入院など)が1.020倍(1.017-1.023)であった。つまりGDF-15が1000上がると死亡リスクは1.01710=1.18倍、病的イベントのリスクは1.22倍になる。すでに知られている心不全の悪化のマーカーであるBタイプナトリウム利尿ホルモン(BNP)、高感度CRP、高感度トロポニン-Tについて補正するとGDF-15はやはり死亡のリスクと有意に相関したが、病的イベントのリスク増加は認めなかった。バルサルタンによる治療は12か月後の時点でGDF-15の値に有意差を生じなかった。
GDF-15はレニンアンジオテンシン系が作用するのとは別の系での心不全の病態を反映しているようだ。