頭を冷やせ

Intra-arrest transnasal evaporative cooling. Castre'n M., Nordberg P. et al. Circulation 2010; doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.109.931691
心臓麻痺で循環が停止すると脳がダメージを受ける。心拍はもどったけれど退院できなかった、という例を減らすためには心停止を発見した直後から脳を保護することが必要だ。大きな器具を使わずに効率よく脳を低体温にするために揮発性の液体を鼻腔に噴霧して冷やすRhinoCillという機械が開発されている。これの有効性を検討する研究(PRINCE研究)の結果が発表された。心停止発見から20分以内に処置開始できた96名(RhinoCill群)と104名(対照群)を比較した。RhinoChill群は救急隊到着後現場ですぐ冷却開始、対照群は病院到着後冷却を開始した。目標体温の34度到達までの時間はRhinoChill群は102分、対照は282分(P=0.03)だった。人数が少ないため生存退院率に有意差は出なかった(R群44%、対照群31% P=0.26)。神経学的後遺症の程度はピッツバーグスケールで1または2の軽度障害の率がR群34%、対照群21%(P=0.21)だった。
同じ号に乗っている別の論文では氷冷したリンゲル液1.9Lを救急隊が点滴することで体温を0.8度下げているが退院時の状態に有意差がなかった。以前の状態がわからない人にいきなり2Lも点滴するのは確かに気が引ける。鼻からのカテーテルで冷却できるのならそのほうがよさそう。