人間の条件

「ほんとにやめるのか?」
「ああ、あと何年生きられるかと思うと、これまでやりたくても後回しにしてきたことに手をつける時だと思ってね。」
「生活していけるのか?」
「一人ならなんとかなるさ。年金だって25年は支払っているからね。」
「ところでやりたくても後回しにしてきたことって何なの?」
「うーん、何と具体的に問われると困るけど、何か世の中を変えるようなことかな。どんな小さなことでもいいから、世の中の一部でもいいから、良い方向へ。」
「それは通常の企業の仕事を通じてもできるんじゃないのか?」
「でも、会社だとどうしても利益が最終目的になるだろ?そうじゃなくてみんながハッピーになることに知恵と時間を使うのさ。」
「そんな活動で持続できるものがあるかな〜?」
「例えばだよ、いろんなお店でポイントがつくけど、めんどくさくてためてないという人もあるだろ?すべてのお店のポイントを一括してためるような仕掛けを作るんだよ。」
「それでどうなる?」
「例えば『森の人』という団体に全てのポイントを集約して、集まったお金で人を雇って首都圏近辺の杉の木を切って在来種の広葉樹の苗に植え替えるんだ。」
「そんなことできるのか?」
「できるかどうかはともかく、アフリカの見ず知らずの子供の援助なんかより、効果が眼にみえるだろ?」
「いろんな会社がOKするかな?」
「さあ、ポイント出している会社もリピーターになってほしいだけで、割引したいわけじゃないから、出したポイントで自社のサービスを割り引くのも、何かに寄付するのも一緒じゃないの?要は使うほうの意識の問題さ。」