骨と膵臓の対話

Fulzele K., Riddle R.C. et al. Insulin receptor signaling in osteoblasts regulates postnatal bone acquisition and body composition. Cell 2010; 142: 309-319
骨と膵臓はお互いのホルモンを通じて対話している、という論文。骨はosteoblast(骨芽細胞)とosteoclast(破骨細胞)のバランスで形成されている。骨芽細胞はosteocalcinというペプチドを出す。これの低カルボキシタイプがホルモンとしての活性を持つ(ビタミンKの作用でカルボキシ化されたosteocalcinは骨マトリックスにつく)。osteocalcinは膵臓に対してインスリン分泌促進作用がある。逆にインスリンが骨芽細胞にどう作用するか?を調べた論文がこれ。骨特異的にインスリン受容体をノックアウトすると、骨はインスリンの作用を受け付けなくなる。インスリンはRunx2という転写因子の作用をブロックしているTwist2を抑制する。結果としてRunx2の作用が増加し、ホルモン活性のあるosteocalcinが増える。骨芽細胞でインスリン受容体をノックアウトすると骨芽細胞自体が減少し、骨が減少する。加齢とともにこのマウスは肥満し高血糖になる。
近年脂肪細胞にはじまり、従来内分泌機能が想定されていなかった臓器からのホルモンが重要な働きをしていることが知られるようになった。例えば肝臓からでる鉄代謝ホルモンのヘプシジン(フェロポーチンに作用して鉄の吸収を抑える)とか。そのうち皮膚とか毛根からも何かのホルモンが…なんてことあるかしら?まあそれは冗談としても筋肉や腱は何かのホルモンを出してもおかしくなさそう。例えば加圧トレーニングは人工的に血流不足にした筋肉から成長ホルモンを出させようという仕掛けじゃなかったかしら?>>修正:血流不足の筋肉から出る乳酸が視床下部を刺激して下垂体からのGHの分泌を増加させる。加圧トレーニングは佐藤義昭氏が正座したあとのふくらはぎの張りがトレーニング後の筋肉の張りに似ていることから開発したもので日米、欧州の特許が取得されている。PubMedを見ても適当な検索ワードが見つからず論文が見つかりにくいのに難儀する。