不整脈をiPS細胞由来の心筋で再現

Moretti A., Bellin M. et al. Patient-specific induced pluripotent stem-cell models for long-QT syndrome. New Eng J Med 2010; doi:10.1056/NEJMoa0908679
long-QT症候群は心電図のQT部分が長くなり心室性瀕脈不整脈を起こしやすくなる。交感神経刺激でこの不整脈は起こりやすくなるのでスポーツ選手の突然死などにも関係する(ダニ・ハルケ、君もか?)。家族性にlong-QTを起こす家系で心筋細胞のイオンチャンネルKCNQ1に変異を認めた。この変異R190Qは心筋の再分極の時に働く内向きカリウムチャンネルの作用を低下させ、再分極(QTに相当)が長くかかることになる。long-QT症候群の患者から皮膚の細胞を採取し、iPS細胞をつくるために4つの遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC)をレトロウイルスで感染させた。できたiPS細胞を心筋に分化させると心室タイプ、心房タイプ、洞結節タイプの3種類の細胞ができた。このうち心室タイプと心房タイプの細胞は活動電位の長さが長くなっていた。さらにカテコールアミン(交感神経刺激に相当)により心室瀕拍が起きやすくなっていたが、βブロッカー(交感神経を抑制する薬、降圧薬または抗不整脈薬として使用)によって瀕拍が抑制できた。
種々の薬剤で予測不能のQT延長が生じて不整脈を生じることがあり、これを安全に検討するためにiPS細胞が重要だろうとは前から言われていたが、本当に実用になりそうだ。ただし手間がかかるので薬の開発段階でヒトに用いる前に安全性の検討に用いることになるだろう。個々の患者で調べるのはまだ先の話。