高井鴻山

小布施の高井鴻山記念館でスケッチ帳を買って来た。北斎が原画を描いたという伝承である。筆で描いたと思えないほど細い線で精密な花や鳥の絵が描かれている。スケッチ帳にはあまり書き込まれていないが、もとの図は部分部分の色や翼の羽毛の枚数など実に詳細に注釈が書いてあってさながら解剖学の精神である。これが80歳を過ぎた老人の作だとするとその精神力は相当なものだ「画狂老人卍」の号もばかばかしくて笑えるし、自由かつ旺盛な好奇心が感じられる。あわよくばそんな老人になりたいものだ。そして、そんな北斎を呼んで厚遇した鴻山も文系の教育を受けながらも同時に博物学に近い科学的精神を持ったひとだったのだろう。

高井鴻山夢物語

高井鴻山夢物語