同一性

「校長先生ご相談がございまして」「なんだね?」「同一性障害のことで」「あの性同一性障害の児童のことかね?彼、いや彼女はいまは女子生徒として認められているはずでしたね」「いや違うんです。こんどは別ので」「男になりたいほう?」「いえ、なんといいますか、『種同一性障害』ともいうべきもので…」「は?夢で蝶にでもなるのかい?」「はい、蝶じゃなくて猫なんですけど、登校のときも塀の上をずっと歩いてきて、授業のときは寝ていてあてるとフーとかギャーとか言うんです」「それで?」「困るので親御さんに質すと、『この子は、自分を猫と思い込んでいるんです』ですって」「それで猫と話ができるのかね?」「ペットショップの店先とかでよく話しこんでいるらしいですよ」「なんか米原万理の『ヒトのオスは飼わないの?』にでてくるロシア愛猫協会の会長さんのような話ですねえ」「それでトイレに砂箱を置いてほしいというのが親御さんの希望なんですが」