私は見た!

「なんだこのやろー!」
「そっちこそ喧嘩売りやがって!」
電車のドアが開くや否や、掴み合いながらホームに降りてくる二人。周りをとりまく人たちは見ないようにする人が半分、恐る恐る見守る人が半分。そのうち殴り合いが始まりそうになると、何人かが携帯を取り出していっせいにシャッターを切り始めた。プライバシー保護法が修正され、犯罪の可能性のある事象については肖像権の侵害を無視して良いということになったためだ。新しい携帯には「目撃者」ボタンが追加され、ひと押しで自動的にカメラが起動し警察の「目撃者」サイトに直結する。撮った写真は自動的にアップされ、携帯本体からは削除される。このため携帯の数だけ監視カメラがあるのと同じになり暴力の抑止力は高まったのだが、反面すごい監視社会になってしまった…。