受容体のユビキチン化

Bandi SR、Brandts C et al. E3 ligase-defective Cbl mutants lead to a generalized mastocytosis and myeloproliferative disease. Blood 2009;114(19):4197-4208
受容体チロシンキナーゼのc-Kitの変異は白血病と胃のGISTで見つかる。プロトオンコジーンのc-CblはユビキチンリガーゼE3としての作用のほかに他のタンパクをつなぎとめる足場としての作用を持つ。c-Cblはs-KitおよびFlt3の機能を抑制している。これはc-Kitがユビキチン化されて細胞内に取り込まれることによる。ユビキチン化作用の障害されるc-Cblの変異が白血病で見つかった。R420Q変異である。骨髄由来の細胞にレトロウイルスでCbl-R420Qを感染させマウスに打つと全身的なマスト細胞増殖を起こし、骨髄性白血病を起こす。Cblはstem cell factor (SCF-1)によるc-Kitのユビキチン化と細胞内取り込みを起こすが変異Cblはこれを阻害する。このためKitを経由するシグナルが異常に長く続く。興味深いことに変異Cblの腫瘍源性の作用はチロシンキナーゼ活性を持たない変異Kitや変異Fltとともに発現させても認められるが、KitやFltを発現させないと現れない。つまり腫瘍化は別の非受容体型チロシンキナーゼであるFynを介していてc-CblはFynと結合している。KitやFltはシグナルに反応してこれらのタンパクが集まる場を提供しているらしい。Kitのチロシンキナーゼに対する抗チロシンキナーゼ薬は実用化されているが、これらの薬剤への初回投与時からの耐性はCblの変異による可能性がある。

チロシンキナーゼ薬にもこんな抜け穴があったのか