他人の手

https://doi.org/10.3995/jstroke.30.496

抄録
40歳,右利き女性.右側後大動脈領域の脳梗塞を発症し,脳梁体部から膨大部右側にも病変を認めた.左同名半盲に加え,「左手が自分の手のような感じがしない」という訴えがあった.左手の観念運動失行や拮抗失行はなかった.他人の手徴候(alien hand sign)については定義の変遷があり,表現が混乱しているが,Brionによる本来の定義では「脳梁損傷患者が視覚外で左手を右手でつかんだときに感覚障害がないのに自分の手と認知できないこと」1)である.本例はこのBrionの定義する他人の手徴候にあてはまると思われ,脳梁離断による症状の可能性が示唆された.

Parkinson病の難病指定の書類を書くのに「他人の手兆候」の有無を聞かれるのだが見たことがないのでどんなものか不明だった。大脳皮質基底核変性症の症状の一つで、パーキンソン病と症状が一部かぶるのでその鑑別のためのようだ。引用した症例は左右の大脳をつなぐ脳梁の梗塞で生じている。