ウルトラマンデブ

ウルトラマンロバートが配属されたのは怪獣の攻撃を免れてひさしい日本という国だった。ここ30年ほどのあいだに日本を取り巻く環境は変化していた。当然人心も変化する。ウルトラマンロバートははじめボブの愛称で親しまれた。かつてのウルトラマンたちが体操の先生のような細マッチョのいでたちだったのに比べ、ちょっと貫禄のつきはじめたロバートの体格に親しみを覚える中高年が増えたためでもある。しかし若い世代からの評価はいまいちだった。イケメンの仮面ライダーに慣れた若いお母さんたちからは「こんどのウルトラマンはちょっとねえ…」というひそかな囁きがあった。戦い方でもかつては肉弾戦をまず挑んでいたのがはじめからスペリオール光線で方をつけようという省力モードだ。光線で爆破したあとの残留放射能がどうの、とか高温で怪獣を消去したあとの硫化物や亜硝酸の降下物が汚染のもとだ、とかかつてはなかった細かい指摘がうるさい。体重が増えたせいかときどき市街地に墜落するのが最大の難点だ。自衛隊が守り切れないときに最後の切り札でいてやっているのにそのぐらいいいだろう?とも思うが。まじめ一転張りだったかつてのウルトラマンたちと違ってかわいい子がいるとちょっと手を出してみたりするボブは「親しみが持てる」と「いい加減なおっさんだ」の票が割れていた。最近では失礼なことに「ウルトラマンデブ」と称して怪獣と戦うのは美少女が乗り組む巨大ロボットのあとにしてくれという意見さえある。