文系の力

大きな本屋の文系の棚をのぞくとやっぱりまだこの国には文系の本物の力が足りないのじゃないかと思う。歴史の大きな流れの中で国の進むべき方向を構想するとき、おのれ一国の繁栄だけを目指すのではなく、現在の文明の持つ限界を超克する何かを加えていくような気迫がわいてくるような。希薄な大気の上に築かれた理想論だけの構築物でもなく、容赦なく大地を収奪していく兵隊アリの集団のような論理でもなく。もしも「自由」が必然的に格差を拡大させるのだとしたら、それを克服するしくみを社会に組み込み、かつそれが依存的なだけの精神を育まないようにする仕掛けを作るためには?ともすれば考え続けることは面倒になり、先達のことばをなぞるだけの教条主義原理主義に身を寄せたくなる。「絶対」とされる何かが自分の外にあって、それに寄りかかることができれば楽なのだ。