おとしもの

「また変な夢を見たよ。」
「どんなの?」
「顔を落としてしまって遺失物取扱所に引き取りにいくっていう夢なんだ。」
「のっぺらぼうになったの?」
「まあそういうことだね。それで取りに行くと、この顔が本当にあなたのものだということを証明するものを提示してくださいっていうわけだよ。」
「こりゃまた面倒な。パスワードが書いてあるわけじゃないし…」
「それでさんざんいろんな細かい特徴をあげて確認してもらうわけさ。左の眉の下に切った跡があるとか、右の頬にうっすらシミがあるとか。」
「でもそんなのよく観察している人なら他人でもわかる特徴じゃない。」
「そうなんだよ。私とこの顔を結びつける証拠って何って考え続けると汗かいてきちゃったよ。」
潜在的に別人になりたいっていう願望かしら?」