地域の主導権争い

イリアスを読んでいるとトロイとギリシアのどちらかに著しい道義的な責任があるという書き方はしていない。トロイではヘレンを誘拐してきたことが戦争の発端であるという認識はされていて、ヘレン自身もそれを苦にする発言をしている。しかしいくら神話の時代といえそれだけのことで戦争まで至るだろうか?要はアガメムノン王が面子をつぶされたことが発端であって、東地中海における覇権が問題だったのじゃないだろうか?同じ地域で両雄並び立たず。どちらも同盟諸国を動員して10年にわたる戦争を行っている。もう最後になるとヘレンなどどうでもいいという扱いだ。勝った方のアガメムノンものちに暗殺されてしまうのだから勝ってめでたしでおわるというものでもない。地域における覇権というのは面子にかけて戦い取らないといけないものなのか?道義的にどうこうといった非難の応酬と力のぶつかり合いが必須というものではなく、地域の人々の幸福を全体的に向上させるようなシステムを構築できた文明が求心力を強めていくというのではいけないのか?まあ、横で見ていると目障りだから今のうちにいちゃもんをつけてやっちまえという気になるのかもしれないが。