SIM1と肥満

SIM1の欠損はマウスで過食による肥満を引き起こす。ヒトで過食による肥満で有名なのはPrader-Willi症候群(PWS)である。PWSでは第6染色体の6q16に異常があるが、ここにSIM1が含まれている。44名のPWS、198名の重度肥満の子供、568名の重度肥満の成人および対照383名でSIM1遺伝子の配列を解析した。PWSの子供4名からI128T、Q152E、R581G、T714Aのアミノ酸置換を発見した。7名の重度肥満成人からT46R、E62K、H323Y、D740Hのアミノ酸置換を発見した。ルシフェラーゼレポーターを用いたSIM1の転写活性の解析ではT46R、H323Y、T714Aには転写活性の低下を伴った。これらの変異は家系内での過食による肥満と相関した。転写活性の低下を伴わないアミノ酸置換は家系内での肥満と相関しなかった。Amélie Bonnefond J Clin Invest. 2013;123(7):3037–3041
Single-minded1(SIM1)はヘリックスーループーヘリックスタイプの転写因子でARNTまたはARNT2とヘテロダイマーを作って作用する。SIM1は視床の室傍核の発生・機能に関係している。2100名の重度かつ早期発症の肥満患者と1680名の対照についてSIM1の配列を決定した。28名の血縁のない患者から13の新たな変異が見つかった。すべてヘテロだった。このうち9種はSIM1の転写活性を低下させた。これらの変異を持つ患者は基礎代謝は正常だが自由摂食時の摂取カロリーが多く自律神経機能の異常を示した。食欲を落とすホルモンのメラノコルチンはMC4R受容体を介して作用する。SIM1の変異を持つ患者はMC4Rの変異を持つ患者と表現型が似ておりSIm1はMC4Rからのシグナル伝達に関係しているのかもしれない。Shwetha Ramachandrappa J Clin Invest. 2013;123(7):3042–3050