少女の絵

美術商のシルバーマンはさるオークションで羊皮紙に描かれた少女の横顔を目にした。ある直観を感じた彼は予算1万8千ドルまでなら出そうと考えたが惜しくも2万ドルで落札されてしまった。通常落札された美術品にはその後もう一度出会えることはほとんどない。ところが数年後彼は再度「彼女」に出会った。何かの縁を感じたシルバーマンは2万ドル余りで「彼女」を買い取った。見れば見るほど不思議な絵だ。長い髪を後ろでネットでまとめ、そこから長いおさげが伸びている。額にかけられたヘアバンドが後ろの髪にかかるところで髪が少したわんでいる。羊皮紙にチョークで描かれた像は陰影をつける線が右下から左上に伸びていて左利きの画家が描いたらしい。もしかしたらダビンチが描いたのではないか?と感じたシルバーマンはケンブリッジ大学のマーティン・ケントに鑑定を依頼する。ケントは細かい鑑定のために画像鑑定専門家のコットに依頼して赤外線撮影を含む高精細の写真を撮る。それによると絵は9層に分かれ、一番下の層で顎の線と額、うなじのラインに微妙な修正がくわえられているのが判明した。この特徴は真作が確定しているダビンチの絵とも符合する。問題は少女が誰かだ。この特徴的なヘアスタイルはダビンチがつかえていたミラノのルドヴィコ・スフォルツァの夫人が初めて披露したもので1491年に初めて現れ1498年頃まで使われた。当時のミラノ候周辺の高貴な女性を探していくと愛人の娘ビアンカスフォルツァが浮かび上がった。14歳で政略結婚させられた女性だ。この姫君の嫁入り道具の本の1ページとしておさめられていたためにキャンバスではなく羊皮紙に描かれていたのでは?との仮説が持ち上がる。ケントのもとへカリフォルニアから有力な情報がもたらされる。ポーランド国立図書館の蔵書に手がかりがあるのではないかというのだ。ケントはコットとともにワルシャワを訪れ件の本を見せてもらう。当時の本は二つ折りにした羊皮紙の真ん中を閉じて作られている。このため1ページを切り取ると片割れのページが宙ぶらりんとなってしまう。コットが本の横を高精細のマクロ撮影してみると確かに宙ぶらりんとなったページが落ちないように隣のページと糊付けされたところが見つかる。ビンゴ!か?残りはページを閉じたとじ具の位置がその痕と思われる肖像画の傷と一致するかだ。これが見事に一致する。さて、これでこの「美しき姫君」はダビンチの真作と認められるのか?まだ疑い深い学者たちが残っている。しかしシルバーマンのもとにはすでに8000万ドルで譲ってくれないかというオファーが来ているという。もちろん彼は丁重に申し出を断った。(11/25夜のEテレより 細かい数字はうろ覚えで間違いがあるかもしれません)