移動居酒屋

「お疲れですね。一杯いかがですか?ビール冷えてますよ。」
「冷えてますよってあなたどこにビールがあるの?」
「このショルダーバッグのなかですよ。」
「へえー、でもいくらなんでも電車の中で立って飲むのは品がないよね。」
「いえ、そんなことないですよ。うちは立ち飲み居酒屋ですから。」
「うちったって君も立ってるだけじゃない?どこにお店があるの?」
「良くご覧になってください。ここに暖簾があるでしょ?カウンターだってあるし。」
「この帽子に下がってるやつが暖簾かあ。そいでバッグの蓋がカウンターになるのか。良く考えたね。それじゃ店のおやじとさし向いでいっぱいといくか。」
「はい、じゃあお通しのワサビ漬け。あとは生憎かわきものしかないですが。」
「いいけどJRに営業許可とってるの?」
「とってるも何も代金だってSUICAで払えますよ。」