何気ない行為

昼の移動時間にカフェで昼食を食べていた。カフェの中にハエが一匹紛れ込んでいてみんな近くに来るたび追い払っている。気温が高いのでなかなかすばしっこい。いやだなと思いながら誰も何もできないでいた。するとそのハエが隣のテーブルの端にとまった。そのテーブルではめがねの女性が文庫本を読みながらアイスティーを飲んでいる。視界の端にハエが入ったのか、その女性は一瞬目を本からそらすとハエを眺めた。そしてすぐ文庫本に戻すと集中して読み始めた。その後だ。ハエがまったく動かないので変だなと思っていると、テーブルの脇を人が通った時のわずかな風にあおられハエがポトリと落ちた。死んでいたのだ。何か信じられないものを見た気がした。彼女は何事もなかったかのように飲み物を飲んでいる。まさか、そのテーブルにとまったときがそのハエの寿命だったなんていう落ちじゃないでしょうね。でもまったく仕掛けが思いつかないのだ。彼女はスプレーも何も使わず一瞬チラッと見ただけなのだ。「京の五条の糸屋の娘、姉は16妹は14、諸国大名は弓矢で殺す、糸屋の娘は目で殺す」というのはこのことか??