PER2のリン酸化が睡眠時相を変える

Shanware NP. Casein kinase 1-dependent phosphorylation of familial advanced sleep phase syndrome-associated residues controls PERIOD 2 stability JBC 2011; 286: 12766-12774
家族性睡眠時相先行症候群(FASPS)は夕方に眠り早朝に目が覚める睡眠パターンが遺伝する症候群だ。概日周期遺伝子のPER2にはリン酸化されうるセリン残基があり(Ser662)、FASPSではここに変異が見つかった。セリン662をリン酸化したペプチドで抗体を作製したところ実際にこの部分がリン酸化されることが証明できた。リン酸化はカゼインキナーゼ1δ(CK1δ)とCK1εの共同によりおこり、ホスファターゼ1で解除された。PER2のリン酸化は概日周期のリセット(entrainment:細胞では血清刺激やグルココルチコイド刺激、生体では光刺激など)にともなって速やかに起こった。リン酸化されたPER2はより安定化する。Ser662Ala変異ではリン酸化されないので半減期が短縮し、Ser662Asp変異ではAspの陰性荷電がリン酸化に似ているので安定性が増す。
慢性的に時差ぼけになるような人にとっては概日周期のコントロールは大事かもしれない。とはいうものの、概日周期は多数の代謝のコントロールに関係しているので睡眠時相を変えるためにPER2をいじる薬を使おうという気にはなれないな。