グレイ

β線でやけどした作業員は数グレイの照射をうけたらしい。放射線治療で40グレイとか50グレイとかかけても1回は2グレイとかで分割してかけるので、知らずにもっといたら死ぬほどの照射を受けていた可能性が高い。「β線」と報道しているのも本当か疑問である。β線は透過性が弱いので表面のやけどですむ。ヨウ素がメインならガンマ線なので透過性が高い。ガンマ線が体内を通過するときに細胞内に電離を生じてラジカルを多数発生する。DNAが修復しきれないほどのダメージを負うと組織障害が出る。熱に直せば水の温度が1度上がるか、くらいのものでも、重要なものの近傍では影響が大きい。電灯の下で本を読むのには問題なくても電球を直接眼球に押しあてればやけどしてしまう。
放射能もれに対して「大丈夫だ、冷静になれ」という論調は多いが「自分らの便利のために人口の少ない海岸の町にとんでもない負担を押し付けて生きてきたんだ」という後ろめたさの反映が含まれている気がする。原子力は最終的には核兵器の二子だ。いつでも核兵器をつくれる技術と相当量のプルトニウムをため込んでいるぞ、と外国をひるませる手段の一つになっているのだ。ジャック・アタリの「21世紀の歴史」では日本が東アジアの不安定な国際関係のなかでいずれ核武装するだろうと淡々と述べている。日本自身がどう主張しようと諸外国はそう(腹のそこで)思っている。そしてそれが日本の安全保障の一部だということだ。