働かないアリ
- 作者: 長谷川英祐
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/12/31
- メディア: 新書
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ところで働かないアリの効用は何かというと、仕事に取り掛かるスイッチの入りやすさに個体差があることによって、巣全体の安定性が保たれるからだ、という。たとえば暑い日に羽を震わせて風を送る仕事に取り掛かるのが早い個体と遅い個体がいることによってより安定的な温度管理ができるのだという。また、全員が同じ基準で働きだすと仕事量が多いと一時的に全員が疲れ果てて仕事が中断してしまい絶え間ない世話を必要とする卵や幼虫が死滅する危険が増えるのだという。
この世に神様はいないのかもしれないが、神の敷いたレールがどういうものなのか?を現実の自然を詳しく調べることで見通そうという努力がなされている。神の意思を探るのは現代では詩人の洞察のみによるのではない。暑いさなかにアリの巣を掘り返して何千というアリの数を数えたりする生態学者もその試みに参加している。