歳をとっても筋肉を落とさないために食事制限しよう

Altun M., Besche HC. et al. Muscle wasting in aged, sarcopenic rats is associated with enhancedaactivity of the ubiquitin proteasome pathway J Biol Chem 2010; 285: 39597-39608
加齢に伴って合成されたタンパク質に異常なものが増える。タンパク質は一本のポリペプチドとして合成され、適切に折りたたまれることによって本来の機能を発揮する。異常な折りたたまれ方をしたタンパク質はしばしば有毒である。したがって細胞は異常な折りたたみ方をされたタンパク質をマークして分解するしくみを持っている。ユビキチン-プロテアソーム系はこの仕掛けで、ユビキチンリガーゼ(E3)の作用でユビキチンが結合したタンパク質をタンパク分解酵素の複合体であるプロテアソームに取り込んで分解する。ラットが年を取ると体重の割に筋肉が減少する(sarcopeniaという)。ところが、食事の仕方で筋肉の減少の仕方が異なる。自由に食べていたものの方が減少が大きい。食事制限をしていたラットは体重は自由に食べていたラットと変わらないが体重あたりの筋肉量が有意に多くなる。このメカニズムを調べていくと加齢に伴ってプロテアソームのタンパク質が増えてくるが、食事制限をしているとこの増加が少ない。加齢に伴ってユビキチン化された筋肉タンパク質は食事制限の有無によらず増えてくる。ユビキチン化を触媒する酵素のCHIPとMuRF1は加齢に伴って増える。くっついたユビキチンをはずす酵素(DUB)も加齢に伴って増える。もうひとつのタンパク質分解系であるオートファジー系のタンパク質であるAtrogin-1/MAFbxは病気などで動けないときとステロイドの作用で増えるが、加齢ラットではAtrogin-1/MAFbxはステロイド投与で増えない。
適宜食事制限をしておいたほうが年をとっても筋力が落ちず自分の足で歩けるのではないだろうか?ペットの飼い方にも参考になる。もちろん人間自身にも。