ROCカーブ解析

Kim H.J., Kim M.H. A NEW STRATEGY FOR THE APPICATION OF ca19-9 IN THE DIFFERENTIATION OF PANCREATICOBILIARY CANCER; ANALYSIS USING A RECEIVER OPERATING CHARACTERISTIC CURVE. AM J GASTROENTEROL
すい臓疾患の患者160名(がん90名、良性疾患70名)胆道疾患322名(胆道がん152名、良性疾患170名)、および20035名の無症状の対照について腫瘍マーカーCA19-9の有用性を検討した。CA19-9は血液型のLewis型がないと陽性にならないのでLeweis+かどうかが重要だが、この研究では区別されていない。ROCカーブ解析で検討した。ROCカーブ解析は検査のカットオフ値を任意に決めて縦軸に感度(本当の病気のうちで検査が陽性に出る率)、横軸に1-特異度(病気でない人が検査で陰性に出る率)をプロットしたときに得られるカーブである。無意味なけんさでは病気でない人でも50%は陽性に出るためROCカーブが右上に向かう直線となる。もっとも優れた検査ではROCカーブは垂直に左上に上り90度右に曲がって右上に向かう直線に近くなる。現実にはそのような検査はないので上に凸のカーブになる。左下から右上に向かう45度の直線からもっともROCカーブが離れるところがよいカットオフ値になる。さて、CA19-9のカットオフ値を37U/mlとするとすい臓がんの患者での感度は76.7%、特異度は87.1%だった。胆道炎や胆汁うったいのある患者では感度は74%、特異度は41.5%に落ちたがカットオフ値を300U/ml にすると特異度は87%に上昇した。言い換えると胆道炎や胆汁鬱滞があるとCA19-9が上がることがあり紛らわしい。以上のことからCA19-9はすい臓がんのスクリーニングにはお勧めではない。すい臓がんの頻度が10万人あたり15名とすると、ランダムに選んだ10万人で検査をすると99985×(1-0.871)=12898名が病気がないのに検査が陽性、15×0.767=11.5名が本当の病気で検査が陽性になる。つまり検査が陽性でもすい臓がんで在る確率は0.00087(0.087%)である。逆に本当のすい臓がんでも23.3%は検査が陽性にならない(特にLewis陰性の人は)。