女性ホルモンの動脈効果抑制作用

Receptor activator of nuclear factor κB (RANK)とそのリガンドのRANKLおよびRANKLの作用を阻害するデコイ(おとり)受容体のostepprotegerinは動脈の石灰化にも関与している。女性ホルモンは一般に動脈硬化を抑制する。RNAK-RNAKL系と女性ホルモンの関係を調べた。ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)にRANKを作用させると石灰化を促進するタンパク質のBMP-2の遺伝子発現が増加し、ヒト大動脈の平滑筋細胞(HASMC)では石灰化を抑制するタンパク質のmatrix Gla protein (MGP)の発現が低下した。RANKはHASMCに骨関係の遺伝子のmRNA発現を誘導し、骨芽細胞様に分化させた。女性ホルモンのエストロゲンはその受容体ERαを通じてHAECとHASMCにおけるRANKLの作用を抑制した。マウスに動脈硬化を促進するためアポE欠損マウスに高脂肪食を食べさせ、さらに卵巣を除去すると動脈硬化と骨そしょう症が悪化した。エストロゲンを補充すると骨そしょう症は改善、大動脈でのsmad-1/5/8タンパク質のリン酸化は低下、MGP発現が増加して大動脈の石灰化は抑制された。 Osako M.K., Nakagami H. et al. Estrogen inhibits vascular calcification via vascular RANKL system. Circulation Research 2010; 107: 466-475