まだ人間じゃない
PKディックの作品に高等数学ができないと人間として認められないという世界が出てくる。米国で政治的にしばしば問題となる堕胎の問題とからむきわどいテーマだ。人間としての意識がいつ芽生えるのか?という問いになるが、少なくとも高等数学が理解できるようになったときじゃないというのはみんなが納得するだろう。じゃあ、これを巻き戻していくといつならいいのか?初期胚からつくられる胚性幹細胞(ES cell)には抵抗があっても、皮膚や肝臓の細胞から作られる多能性幹細胞(iPS)には倫理的問題を感じなくていい、というところに微妙さが現れているかもね。正確な測定が出来なくても物体に質量があることは明白なように、「生きているもの」には何か直感的にわかる存在感がある。しかしなぜ物体に質量があるのかいまだに分からないように「生命」になぜ存在感があるのかも不明だ。
まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)
- 作者: フィリップ・K・ディック,Rey.Hori,浅倉久志,友枝康子,大瀧啓裕,小川隆
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/03/07
- メディア: 文庫
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